プレキャスト化が有効なPC構造物
1.概要
- 国土交通省は2016年を「生産性革命元年」と位置づけ、生産性の向上を目的としたi-constructionを推進しています。PC構造物における生産性の向上の具体策として「プレキャスト化」が有効であり、従来までは工期の短縮や省力化・省人化といった観点に着目されてきましたが、高耐久な構造物の実現や資機材の転用によるコストの低減といった効果も期待できます。さらには、初期コストだけではなく、工期短縮による交通渋滞の早期解放での経済的効果、工事現場周辺環境への影響の低減などの多様な付加価値も生み出すことができます。
- PC構造物におけるプレキャスト化は、土木(橋梁)ではJIS桁やセグメント桁など、建築分野ではPCaPC梁・柱やPC板など多くの実績がありますが、それ以外の様々な構造物においてプレキャストPC部材が用いられた事例を以下に紹介します。
2.施工事例
2.1【雨水調整池】プレキャスト部材の使用による工期短縮、工事費低減および耐震性の向上
福岡県にある御笠川流域における博多駅周辺では平成11年、平成15年に甚大な浸水被害が発生しました。このことから福岡市では、博多駅周辺の総合的な浸水対策の一環として、雨水調整池の増築工事が行われました。そこで、経済性の向上、施工工期の短縮を目的にプレキャスト部材を用いた地下調整池の構造が採用されました。
調整池の構造概要
プレキャスト床版の架設
完成後
2. 2 【競技場】プレキャスト化による高品質・高耐久化と段床板の長スパン化
本工事は、北九州市の新たなシンボルとなる競技場を新設する工事で、小倉港に隣接した場所に位置します。
耐久性上厳しい環境にあること、段差が多いことにより型枠の組立てなどの現場作業に手間が掛かることから、工場製作による高耐久化と現場作業の効率化を図ったプレキャスト部材が採用されました。
また、段床板においては、長スパン化が可能なプレキャストPC部材としています。
※段梁、段床板、斜柱、小梁、キャンチスラブをプレキャスト化
構造概要(バックスタンド)
段床板鋼材配置図
段梁の架設状況
段床版の架設状況
スタンド全景
2.3 【パラペット】プレキャスト化による更新工事の工期短縮
地震時の耐震性能の確保と伸縮装置を含めた桁端部の維持管理の向上を目的として、パラペットの取替えを実施しました。そこで、工事における高速道路の交通規制時間が長いほど社会的影響が大きくなるため、工期短縮および耐久性の向上を目指し、パラペット部材のプレキャスト化を実施しました。
パラペットの取換え概要
プレキャストパラペットの設置完了
既設橋台との接合